石を削って物を作り、表現することなど人生において何回ほどあるのだろうか。少なくとも、大人になってから石を削るような経験は、普通の現代社会においてマイノリティな存在ではないだろうか。それこそ昔は石は身近な素材だったかもしれない。しかし現代には石に代わる様々な素材が日常を便利に、豊かにしてくれている。
天然の素材というのは不思議なもので、念のようなものが宿りやすい。そのままの自然な状態で畏敬の念の対象となることもしばしばある様に、人が思いを託す対象として歴史的にも多く用いられてきた経緯がある。それは少しずつ削って形にするという造形行為自体が要求する時間の流れが、その性質を一層帯びやすくしているかもしれない。
男子部生徒の多くが、石を削って磨きたがる習性というか、本能にも近い様なものをもっている。しかしそれは子供である事にも増して、自由学園という環境が生徒の純粋な成長を促していることを考えると、当然のことだと気付かされる。
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指導|酒井恒太